
急性外傷でのアイシング
スポーツの場で幅広く用いられるアイシング。アイシングとはその名の通り、患部を「冷やす」物理療法の一つです。氷やコールドパック、アイスバッグ、アイスバス、コールドスプレー、アイシング機器などを用いて行います。
打撲や靭帯損傷、肉離れなどの急性外傷にはよく「RICE(ライス)」と呼ばれる、rest(安静)、ice(冷却)、compression(圧迫)、elevation(挙上)の4つの処置が同時に行われます。それらの処置の1つに挙げられるように、アイシングは重要な役割を果たします。
組織(皮膚、筋、関節内など)の温度を下げることで、局所麻酔のような効果が得られるほか、神経伝達速度を遅らせて痛みを和らげることができます。また、細胞の新陳代謝も抑えることが分かっています。特に、周囲の組織の新陳代謝を低下させることには大きな意味があり、出血などで低酸素・低エネルギー状態となった周辺組織の二次的損傷を防ぎます。
慢性外傷でのアイシング
また、急性ではない慢性外傷(膝や肩の慢性的な炎症や痛みなど)に対してもアイシングは活躍します。これにより、血管の拡張や血流が軽減し、熱さと痛みが和らぎます。腫れや炎症の抑制効果に関してはまだ報告が少ないですが、今後の研究の結果に期待したいところです。
コンディショニングのためのアイシング
そのほか、急性外傷や慢性外傷ではない、練習や試合などで生じた筋のわずかな損傷の回復やパフォーマンス向上の目的のためにもアイシングが行われます。よく、プロ野球選手のインタビューで肩を冷やしているシーンを見かけますが、あれもアイシングの一つです。
アイシングで組織の損傷を軽減して回復を早めると同時に、体力の消耗を防ぐことで、蓄積した疲労が軽減されるとの報告もあります。また、激しい運動後、後になって出てくる筋肉の痛み(いわゆる筋肉痛)を軽くするともいわれています。
スポーツの様々な場面で効果が期待できるアイシングですが、使い方によっては悪影響を及ぼすこともあります。実施の際は、適切なタイミングや方法で行うことが重要です。
参考:
・小笠原一生, 臨床スポーツ医学 32(5): 480, 2015
・加賀谷善教, 臨床スポーツ医学 32(5): 488, 2015
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